震災被災者の二重ローン問題などで、その扱いが問題になっていた義捐金、災害弔慰金、支援金について、差押禁止とする法案が成立しました。義捐金等の受給権を差押禁止債権とするだけでなく、支払われた金銭も差押禁止動産とするようです。
義援金差し押さえ禁止法が成立=被災者負担を軽減
東日本大震災の被災者に日本赤十字社などから地方自治体を通じて支給される義援金の差し押さえ禁止法が23日午後の衆院本会議で全会一致で可決、成立した。国や地方自治体から支給される災害弔慰金と被災者生活再建支援金、災害障害見舞金の差し押さえを禁じる改正関連法も同本会議で成立した。現行の破産法は、破産者が手元に残すことのできる自由財産について、標準的な世帯が必要とする生活費の3カ月分(99万円)と定めている。一方、現行の生活再建支援法などでは、最大支給額はそれぞれ災害弔慰金500万円、被災者生活再建支援金300万円、災害障害見舞金250万円となっており、手元資金の上限を拡大することで自己破産した被災者の金銭的負担を軽減するのが目的。(2011/08/23-19:19)(時事ドットコム)
東日本大震災及び福島原発事故では、住宅ローン等の支払いが困難になる被災者の自己破産が予想されます。
被災者に対して支払われる、義捐金、支援金(被災者生活再建支援法)、災害弔慰金(災害弔慰金の支給等に関する法律)等を、自己破産手続きにおいて、債権者に配当される財産と扱うのかどうかどうかは問題になっていました。法律上差押禁止となっていなかったので形式的には債権者に配当される財産にあたることになりそうですが、避難生活を送っている被災者の生活を考えて被災者に財産を残すような解釈上の工夫が東北地方の裁判所ではなされていたようです。
しかし、今回の差押禁止法が成立したことで、義捐金等は債権者に配当される財産にはあたらない財産(これを自由財産といます)として扱われることになります。もっとも、これで全ての問題が解決するわけではありません。
実際にこれらの金銭を受給して預金口座に振り込まれますと、自己の他の預金と混ざって区別がつかなくなりますで、義捐金等が振り込まれた預金を当然に自由財産と扱えなくなります。また、現金として保管していた場合も、他の現金と混ざってしまうと同様の問題が生じます。結局は、実務の柔軟な運用によって解決していくことになりそうです。
東京電力に対する賠償金は、今回の法律でも差押禁止とはされていませんから、その破産手続上の問題は残ります。もっとも、被災者が大きな経済的損失を被っていることや、これからも当面の生活資金として使用せざるをえないことから、自由財産の拡張により、かなり柔軟な対応をするのではないかと思われます。
東日本大震災に関する法律問題② 「東京電力が原発賠償を開始」
東日本大震災に関する法律問題③ 「私的整理ガイドライン」の利用低迷」
平成23年9月21日
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