任意売却とは、住宅ローン等の不動産を担保にしたローンの返済が困難な場合に、不動産会社を仲介して不動産を通常の売買のように任意に売却することです。
この任意売却を扱う不動産会社はとにかく営業熱心です。
不動産競売の情報が公開されると不動産会社は債務者に熱心に任意売却をすすめてきます。また、破産手続開始決定が官報に掲載されると、不動産会社から売却物件はありますかという電話やファックスが破産管財人宛てに大量にきます。
任意売却は、一般的に債務者に有利な手段ですし、当事務所でも任意売却をすすめることもあります。
不動産屋が主張する任意売却のメリットは
- 任意売却すれば競売より高値で売れる。
- 任意売却すれば自己破産しなくてもよい場合もあるし、自己破産する場合も費用が安くなる。
- 任意売却では引越し費用を出してもらえる。
というものです。
そして、不動産屋の営業マンは、「自己破産をすすめる弁護士はとんでもない。そんな弁護士は解任しましょう。」と任意売却をすすめてきます。
しかし、自己破産を予定しているなら破産申立前に任意売却することのメリットはそこまで大きくないのです。
そもそも任意売却後に残ったローンは、支払義務が残るので高値で売れたとしても結局払えないことにかわりありません。また、「不動産があると管財事件になり高額の予納金が必要だが、売却すれば同時廃止で予納金が不要だ」との不動産屋はいいますが、不動産があってもある程度のオーバーローン物件なら同時廃止になることはよくありますし、逆に不動産がなくても管財事件になることはよくあるのです。なにも資産がなくても管財事件になる事案は実際は山ほどあるのですが、多くの不動産屋はそんなことは教えません。また、確かに引越費用がでるのはメリットなのですが、破産申立をした場合や競売になった場合より何カ月も早く引越し先で家賃の負担が発生することになるため、任意売却しない方がむしろお得だったという場合も多いのです。
誤解しないでいただきたいのは、任意売却は適切に行えばメリットの多い手法です。ただ、破産申立予定の場合は申立て前に任意売却を行うメリットが常にあるわけではないのです。
平成24年4月6日